大阪高等裁判所 平成3年(行コ)50号 判決
事実及び理由
第四 争点に対する判断
(各工場の建設費用の支出について)
当裁判所の認定及び判断は、次のとおり付加するほか原判決「事実及び理由」欄「第三 争点に対する判断」(原判決八枚目表五行目から同裏五行目まで)記載のとおりであるから、これをここに引用する。
1 原判決八枚目表六行目「住之江工場」の次に「は昭和六三年に完成し、そ」を付加し、同八行目「工場」の次に「は平成二年完成し、そ」を付加する。
2 同八枚目裏三行目「できない。」の後に次のとおり付加する。
「また、控訴人らは乙第二五号証及び乙第三七号証記載の費目が控訴人らが主張する原判決添付別紙工事費用目録記載の費目と一致していないと主張するが、かかる事情は前記結論を左右するものではない。」
(各工場の操業費用の支出の違法性について)
一 まず、廃棄物処理法制について概観する。
1 昭和二九年に清掃法が制定され、大阪市はこの法律に基づき、清掃条例を制定していた。その後昭和四五年に廃棄物処理法が制定され、大阪市はこの法律に基づき、廃棄物の処理及び清掃に関する条例及び同規則(廃棄物処理条例、同規則)を制定し、その後平成五年に右条例を改正し、廃棄物の減量推進及び適正処理並びに生活環境の清潔保持に関する条例(以下「新条例」という。〔証拠略〕)、同規則(以下「新規則」という。)が制定された。
2 廃棄物処理法は、その二条で、産業廃棄物と一般廃棄物とに分け、産業廃棄物とは、事業活動にともなって生じた廃棄物のうち、燃えがら、汚でい、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物をいい(三項)、一般廃棄物とは、産業廃棄物以外の廃棄物をいう(二項)と定義している。
3 一般廃棄物について、廃棄物処理法六条一項は、「市町村は、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する計画を定めなければならない。」と規定している。そして、一般廃棄物処理計画には、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処置に関し、一般廃棄物の発生量及び処理量の見込み(一号)、一般廃棄物の排出の抑制のための方策に関する事項(二号)、分別して収集するものとした一般廃棄物の種類及び分別の区分(三号)、一般廃棄物の適正な処理及びこれを実施する者に関する基本的事項(四号)、一般廃棄物の処理施設の設備に関する事項(五号)、その他一般廃棄物の処理に関し必要な事項(六号)を定めることにしている(同二項)。また四項は「市町村は、その一般廃棄物処理計画を定めるに当たっては、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関し関係を有する他の市町村の一般廃棄物処理計画と調和を保つよう努めなければならない。」と規定している。
同法六条の二は、「市町村は、一般廃棄物処理計画に従って、その区域内における一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し、及び処分しなければならない。」と規定し、六項は手数料について、「市町村は、当該市町村が行う一般廃棄物の収集、運搬及び処分に関し、条例で定めるところにより手数料を徴収することができる。」と規定している。そして、大阪市では現在施行されている新条例の三〇条に「市長が一般廃棄物の収集、運搬又は処分を行う際には、次表の範囲内で市長が定める手数料を徴収することができる。」と規定し、表の中で、市長が指定する処理施設へ搬入されたものの処分の手数料は、一〇キログラムまでごとに五八円とされている。更に同規則一二条で条例三〇条一項の市長の定める手数料は次表のとおりである。」と規定し、表には廃棄物処理法七条一項の許可業者については、市長が指定する処理施設へ搬入されたものの処分の手数料は、二九円とされ、それ以外の者については五八円とされている。なお、条例三一条には「市長は、天災その他特別の理由があると認めるときは、前条の手数料を減免することができる。」と規定している。
また、同法七条一項は、「一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域を管轄する市町村の許可を受けなければならない。」と規定している。
4 産業廃棄物に関して、廃棄物処理法一〇条一項は、「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。」と規定し、排出者責任の原則に基づき、その事業活動に伴って生じる産業廃棄物を自ら処理しなければならないと定めている。
しかし、同条二項には、「市町村は、単独に又は共同して、一般廃棄物と併せて処理することができる産業廃棄物その他市長村が処理することが必要であると認める産業廃棄物の処理をその事務として行うことができる。」と規定し、市町村の裁量により事務として産業廃棄物を処理できることとし、公共団体の公共サービスを通じて事業者の処理を補完することを認めている。そして、右規定に従って大阪市は現在新条例を定め、その二三条一項(告示産業廃棄物)及び五項に左記のとおり規定し、これにより、大阪市は右条例に定められた範囲内で産業廃棄物を処理している。
記
二三条
一項 本市は、法第一〇条二項の規定により必要と認める産業廃棄物を処分する。
二項 前項の産業廃棄物(以下「告示産業廃棄物」という。)は、市長が定めて告示する。
三項 告示産業廃棄物の処分は、一般廃棄物の処理に支障のない場合に限る。
四項 第一九条及び第二〇条の規定は、告示産業廃棄物について準用する。
五項 本市は、告示産業廃棄物のほか一般廃棄物と区別し難い産業廃棄物を一般廃棄物の例により処理することができる。
産業廃棄物の手数料については法一三条二項に規定され、大阪市は現在施行されている新条例三三条で、「本市が告示産業廃棄物の処分を行う際には、一〇キログラムまでごとに五八円の範囲内で市長が定める費用を徴収する。」と規定し、同規則二九条で右三三条一項の市長の定める費用は一〇キログラムごとに五八円とされている。
二 大阪市の廃棄物処理体制
〔証拠略〕によれば、以下の事実が認められる。
1 大阪市は一般廃棄物の中間処理として焼却処理方式をとっており、昭和三八年一月に完成した住之江工場(旧)を皮切りに順次ごみ焼却工場を建設してきたものであり、昭和五五年に完成した大正工場をもって一〇工場(住之江、平野、森之宮、西淀、東淀、港、大正、南港、鶴見、八尾)による全量焼却体制を確立した。なお、住之江工場(旧)の計画処理能力は一日当たり二八〇トンで、鶴見工場(旧)は昭和三九年から昭和四〇年にかけて建設され、計画処理能力は一日当たり四三〇トンである(〔証拠略〕)。そして、住之江工場が老朽化してきたため、新住之江工場の建て替えに至ったものである。
2 大阪市の昭和六〇年度の事業概要によると、一般廃棄物については、一般家庭や事務所から排出される一般廃棄物(ごみ)については市が直営で週二回収集している、市場、飲食店、デパート、地下商店街など事業系一般廃棄物(ごみ)を排出するところで、夜間や早朝の収集作業を必要とする場合及び排出量が多量の場合は、市が許可した一般廃棄物処理業者(四四業者)が個々に排出者と直接契約して収集を行っている、また産業廃棄物については、事業者に処理責任があり、昭和六〇年三月現在産業廃棄物処理業の許可業者は一八九二業者であり、産業廃棄物再生利用業者は七業者である。
3 新住之江工場は焼却能力一日当たり六〇〇トンで昭和六三年に完成し、新鶴見工場は焼却能力一日当たり六〇〇トンで平成二年に完成した。
三 大阪市の産業廃棄物処理の経緯
〔証拠略〕によれば、以下の事実が認められる。
1 昭和四五年一二月の廃棄物処理法の制定により、廃棄物は、一般廃棄物と産業廃棄物に区分された。
2 ところで、大阪市では、廃棄物処理法制定以前から、産業廃棄物が一般廃棄物と同様に業者によって収集されており、また産業廃棄物に関してこれを専門に扱う業者もいなかった。そして産業廃棄物と一般廃棄物を区別することも困難であった。
3 そこで、大阪市は、廃棄物処理条例一一条で、廃棄物処理法一〇条二項に基づく産業廃棄物の処置に関する事項を定め、一般廃棄物と容易に区別することが可能な産業廃棄物は、一般廃棄物とは別に処理し、容易に区別し難い状態で排出され、そのまま収取されることが多い形態のものについては、一般廃棄物との混合処理が可能であるため、一般廃棄物の例によるものとした。
4 そして、昭和五一年二月、大阪市環境保健局と許可業者との間で右規定を受けて、許可業者が同時期以前から廃棄物処理施設に搬入していた産業廃棄物の内、一般廃棄物との混合処理が可能であり、かつ、一般廃棄物と区別し難い状態で排出される物に限って、許可業者が産業廃棄物処理業の許可を得ることを条件として、従前同様に右施設で受け入れることとする覚書(以下「本件覚書」という。)を交わした。そして、搬入手数料については一般廃棄物の減額手数料をそのまま適用することとした。
5 その後、大阪市では昭和六一年から、本件覚書に基づく産業廃棄物のうち、排出量の多い事務所(昭和六一年度は月三〇トン以上、昭和六二年度は月二〇トン以上、昭和六三年度は月一〇トン以上排出する事務所)から排出されるものは、「特定廃棄物」として一般廃棄物とは別枠で北港埋立処分地において受け入れることとした。そして、平成四年度以降は特定廃棄物はすべて大阪湾広域臨海環境整備センターをはじめとする民間の処理施設(埋立処分地)において処理されるようになった。
6 「建設系廃棄物」は、建物の建設工事等により排出される廃棄物の通称であり、コンクリートがら等の産業廃棄物と、家具等の一般廃棄物の混合物である。大阪市では明らかに産業廃棄物として分離できるものは、分離して民間施設に搬入したり、リサイクル業者に売却するよう指導し、建設系廃棄物の混合処理が可能で一般廃棄物と区分しがたい産業廃棄物の処理は廃棄物処理条例により大阪市の廃棄物処理施設に受け入れてきた。しかし、大阪市は、平成元年度から建設系廃棄物を取り扱う許可業者の数を限定し取扱業者の固定化を図っている。
7 右産業廃棄物条例一一条の規定は新条例二三条になっている。
四 大阪市域外のごみ及び産業廃棄物の流入について
当裁判所の認定及び判断は、次のとおり付加、訂正するほか原判決「事実及び理由」欄「第三 争点に対する判断」中の(大阪市域外のごみ及び産業廃棄物の流入について)(原判決八枚目裏八行目から同六〇枚目表七行目まで)記載のとおりであるから、これをここに引用する。
1 文中、「原告」を「控訴人」と、「被告」を「被控訴人」と各訂正する。
2 (大阪市政研究所及び大阪市職員労働組合の指摘関連)
(一) 原判決九枚目表九行目「きびしく」を「厳しく」と、同九枚目裏一行目「は明らかではない。」を「についての指摘はない。」とそれぞれ訂正する。
(二) 同一〇枚目裏五行目「しかし」から同八行目までを次のとおり訂正する。
「そして、その計算根拠について、近代化研究報告書(〔証拠略〕)によると、「一つ目は、昭和六一年三月以降実施している、工場、処分地での許可業者搬入車両の抽出ダンピング(展開検査)である。これによる積載物検査における平成元年六月までの発現率一・六パーセントを昭和六三年度実績一一四万トンに掛けると、年量で約一万八〇〇〇トンとなる。二つ目は昭和六三年度に実施した、(第一次)廃棄物実体調査(ランダムサンプリングにより計量器で推定。住之江工場等建設反対にかかる裁判で大阪市側証拠として提出済みである。)の結果からの推計によると、年間五万トン程度になる。」との指摘がある。しかし、右の発現率についての具体的な調査方法及びその規模については明確ではなく、前記認定事実によると市域外からのごみが流入していることが認められるものの、右数字をそのまま流入しているごみの量として認定することはできない。」
3 (統計資料に基づく事実関連)
(一) 同一八枚目裏六行目「他の都市のついても」を「他の都市についても」と訂正する。
(二) 同二二枚目表五行目と六行目の間に次のとおり付加する。
「〔証拠略〕によれば、近代化研究報告書には、昭和六二年、平成元年の、札幌市、仙台市、東京都、川崎市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市、広島市、北九州市、福岡市を比較すると、一般廃棄物について、人口一人当たりの量及び市民所得水準に対する割合において大阪市の値が他市に比して大きいとの指摘、主要部市の一人当たりのごみ量と朝日新聞社発表一人当たり民力水準を基礎データとして、一三大都市の回帰一次傾向線を求めると、大阪市はこれからかなり乖離しており、これは、大阪市においては自己搬入のウエイトが小さいことや、覚書等産廃及び建設系廃棄物の扱いに原因することがかなりあるのではないかと推測されるとの指摘がなされていることが認められる。
右推測については、これを否定するものではないが、右各都市のごみ量が同じ基準で測量されているかどうかは不明であるから、右数値の比較により大阪市域外からのごみ量を推認することはできない。」
(三) 同二七枚目表末行に次のとおり付加する。
「(5) 事業系一般廃棄物の割合(3)
控訴人らは、東京ごみ白書(〔証拠略〕)の「家庭系ごみ」と「事業系ごみ」の割合は四対六であるから、この比率を利用すると大阪市の場合に相当量の事業系ごみが流入しており、三〇万トンを超えることは確実であると主張する。
しかし、東京都と大阪市の場合で家庭系ごみと事務系ごみとの比率が同じであることを認めるに足りる証拠はなく、したがって、これが同じであることを前提とする控訴人らの主張はその前提を欠き、採用できない。」
(四) 同二七枚目裏一行目「(5)」を「(6)」と、同三〇枚目表五行目「(6)」を「(7)」と各訂正する。
4 (住民による調査関連)
同三五枚目裏五枚目「前年翌年の七月」を「前年及び翌年の各七月」と訂正する。
5 (森住推計関連)
同四〇枚目表一〇行目「にもかかわらず」を「ばかりか、森住推計はそのいずれの手法にも軽視することのできない欠陥を有するものであるから、」と訂正する。
6 (大阪市推計関連)
(一) 同四四枚目表三行目ないし四行目にかけて「あるが、そのうえ、」を「あり、」と、同裏五行目「てきる」を「できる」とそれぞれ訂正する。
(二) 同四五枚目表一一行目「廃棄物」を「ごみ」と、同裏一行目「拘束推肥」を「拘束堆肥」とそれぞれ訂正する。
(三) 同四七枚目裏九行目と一〇行目の間に次のとおり付加する。
「(5) 〔証拠略〕(研究代表者田中信寿作成の都市圏における固形廃棄物の発生・循環構造の解明とその管理計画論)によれば、札幌市のごみについて六年間にわたる研究成果によると、ごみの見掛比重について、全体における平均値は
楕円体型のごみ 平均〇・一〇二五
直方体型のごみ 平均〇・〇六〇九
四角錐型のごみ 平均〇・〇七四〇
となっており、事業系のゴミステーションにおける見掛比重は
楕円体型のごみ 平均〇・一二三八
直方体型のごみ 平均〇・〇七一四
となっていることが認められる。
そして、札幌市の場合可燃物として収集されている一般収集ごみの中に不燃物も含まれていることが認められるから(〔証拠略〕)、不燃物として分別収集されやすい缶、ビンの見掛比重を参考にみると、
清涼飲料水(アルミ缶・三五〇ミリリットル) 〇・〇四四
(スチール缶・三四〇ミリリットル) 〇・一三八
清酒・開口型(ガラス・一八〇ミリリットル) 〇・四六
であることが認められる(弁論の全趣旨)。
しかし、右報告書は札幌市内にある約二万六〇〇〇あるごみステーションの八七のごみステーションの調査に基づくもので、しかもごみの容積につき実測したものではなく、撮影した写真から三つの種類の判断をなしたものに過ぎず、正確性に疑問があり、また右調査は家庭系ごみの調査であり、事業系ごみあるいは産業廃棄物を含んだものではなく、したがって、この数値をもって大阪市の廃棄物の見掛比重とすることには無理がある。
また、〔証拠略〕(高月教授の証言調書)で、高月教授は「いろいろ実体を調べてみても、〇・一以下のものが圧倒的に多いと、こういうことでございますね。」との質問に対して「はい。」と答えている。
しかし、高月教授が大阪市のごみの実体調査をなしたわけではなく、右は一般論として証言されており、右証言部分によって、大阪市の用いた見掛比重〇・三が直ちに否定されるわけではない。
そして、控訴人らは見掛比重を〇・一二五として計算すると、ごみ量の五三・三九五パーセントが実重量であり、業者が大阪市に排出先との契約量として届け出たごみの総量約一二四万九〇三九トンの五三・三九五パーセントである六六万六九二四トンがごみ重量であり、昭和六二年度におけるごみ総重量一〇八万七〇九〇トンとの差が四二万〇一六五・四二トンあり、これが市域外からのごみ量であると主張している。
しかし、控訴人ら主張の見掛比重が採用できないことは前記のとおりであり、これを前提とする控訴人らの右主張は採用できない。」
7 同五一枚目裏一行目と二行目の間に次のとおり付加する。
「7 近代化研究報告書について
(一) 〔証拠略〕によれば、被控訴人の環境事業局は平成元年及び二年度の両年度にわたって、高月教授、阿部教授、郡嶌教授の三教授で構成する大阪市廃棄物収運業界近代化研究会に研究委託していたが、右報告書には次のような指摘がなされていることが認められる。
覚書産廃、特定廃棄物、建設系廃棄物の受入れの是非は別にして、更に覚書産廃の量は不明であるが、市域外ごみの流入量は、特廃・建廃の量を勘案しても、大阪市環境事業局の説明する量(年間一万八〇〇〇トンから五万トン)を上回るのではないかという疑いを、本研究会としては捨て去ることはできない。
マクロな視点で、市域外ごみ量を正確に推計することが困難であることは認めるが、工場建設反対にかかる裁判でも大きな問題となったこともあり、大阪市の廃棄物行政におけるきわめて優先度の高い課題であることからも、まず第一に、市域外ごみ量を正確に推計し、次に、その原因を究明し、必要とあらば早急にその是正を図ることが必要である。
(二) しかし、右研究会も、大阪市の回帰一次線からの乖離の原因は自己搬入の少なさや、産業廃棄物の扱い方にあるのではないかと推測しており、また市域外廃棄物がどの程度流入しているかについては、これを正確に推定することは困難であることや、そのための資料が十分に備わっていないことを指摘しているのみで、控訴人らが主張するような大量の市域外廃棄物が流入していることを述べているわけではない。すなわち、右研究会は、市域外廃棄物の流入量が、大阪市環境事業局の説明する量を上回るのではないかという疑いを捨て去ることはできないと述べてはいるが、これは文字どおり推測の域をでるものではないし、その量の多寡については触れていない。
したがって、右近代化研究報告書によっても、市域外の廃棄物の大量流入の事実が裏付けられたとはいえない。
8 証人高月の証言
前記近代化研究報告書の作成に当たった証人高月は、大阪市に市域外から流入するごみの量について、「控訴人ら側が主張されるほども多くはないですが大阪市さんが主張されているような値でもない」と証言し(〔証拠略〕)、前記近代化研究報告書と概ね同趣旨の内容の証言をしているが、同証言の中でも、あくまで推定であると断っているものであり、これのみによって控訴人らの主張が裏付けられたとはいえない。」
8 同五一枚目裏二行目「7」を「9」と訂正する。
9 (チェック体制)
(一) 同五三枚目裏二行目末尾に次のとおり付加する。
「そして、近代化研究報告書では、「六一年三月以来ダンピングチェックを何回実施しても、市域外ごみが発見される状況にあるということであり、二回三回と市域外ごみの搬入を重ねている事業主も存在するということである。本研究会としては、市域外ごみの搬入がこれまでに処分された事例を大きく上回っているものと推測しており、その点から考えて、現在の制裁内容は不十分であって、抑止効果を上げ得ていないものと判断する。」と指摘し、証人高月も同旨の証言をなしている(〔証拠略〕)。」
(二) 同五四枚目裏一行目から四行目までを次のとおり訂正する。
「が、大阪市では、中継基地からの搬入量を五割削減する措置を講じ(〔証拠略〕)、中継基地からの搬入量の削減に努めている。」
(三) 同五四枚目裏一〇行目「被告がその原告の主張に反する主張をした」を「被控訴人が控訴人らの主張に反論した」と訂正する。
10 (中継基地)
同五六枚目裏二行目「指摘をしている。」の次に以下のとおり付加する。「また、近代化研究報告書(〔証拠略〕)では、「中継基地に関して、市域外の一廃、産廃、建設系廃棄物の大阪市施設への流入のための中継基地になっているのではないかという疑いを捨てきれない、特に市域外に位置するなど遠隔地の中継地がことさら必要であるかどうかについては疑問があり合理的な説明ができないのではないかと考えられる。」と指摘し、証人高月(〔証拠略〕)も同旨の証言をなしている。そして、」
11 同五九枚目裏四行目から同六〇枚目表二行目までを次のとおり訂正する。
「(七) 手数料減免措置
〔証拠略〕によれば、大阪市の一般廃棄物あるいは産業廃棄物の手数料減免の実体及び経緯は次のとおりである。
(1) 大阪市では昭和四一年までは、許可業者の収集、運搬した廃棄物は埋め立て処分場に無料で受け入れていた。しかし、埋立処分場の収用能力に限界がきたため、大阪市は、廃棄物処理焼却工場を建設し、徐々に許可業者の収集、運搬した廃棄物を右工場で受け入れるようになり、その過程で手数料をとるようになった。その際、許可業者から徴奴する手数料額については一般の市民の搬入等と比べ減免措置をとった。すなわち、一キログラムまでごとに一〇銭のところ、許可業者については七割減免して三銭とした。
(2) 昭和四七年手数料を一円に増額する改訂が行われたが、その際にも減免措置として、焼却工場に搬入する分については九割減免して一〇銭に、埋立処分地に搬入する分については九割五分減免して五銭にした。
(3) その後昭和四九年、昭和五一年に手数料の改定が行われたが、その際にも九割以上の減免の措置がとられた。
(4) 大阪市は昭和五六年の改訂の際にも、改定後の手数料三円二〇銭を九割減額して三二銭とした(九割減免の措置を取っている点については争いがない)。
(5) また大阪市は平成四年四月一日付で廃棄物処理条例及び同規則の一部改正を行い、許可業者のごみ搬入手数料を一〇キログラムまでごとに二九円とし、大阪市同和衛生事業組合の組合員以外の許可業者に対しては右のような減免措置を廃止した(この点争いがない)。しかし、経過規定により平成一〇年までは減免措置が続けられることになる。
以上のように大阪市が許可業者に対して手数料の減免措置を採っていることは、周辺都市からの一般廃棄物や産業廃棄物の流入を招く原因となる可能性が大きいものと認められ、減免措置の廃止によりその効果が期待される。しかし、右措置によってどの程度の市域外の廃棄物が流入しているのかにつき具体的数字は不明である。
(八) 覚書産廃
〔証拠略〕によれば、以下の事実が認められる。
(一) 昭和五一年二月、大阪市環境保健局と許可業者との間で、許可業者が同時期以前から廃棄物処理施設に搬入していた産業廃棄物の内、一般廃棄物との混合処理が可能であり、かつ、一般廃棄物と区別し難い状態で排出される物に限って、許可業者が産業廃棄物処理業の許可を得ることを条件として、従前同様に右施設で受け入れることとする覚書(本件覚書)を交わし、右覚書は現在まで廃止されていない。
(二) 大阪市は大阪市住之江区南港南四丁目二番一九号の土地を大阪港木材倉庫株式会社に調査研究を委託して提供し、同株式会社は大阪産廃事業協同組合に対し、調査研究に協力することを条件として右土地において建設系廃棄物の選別業を行わせている。しかし、大阪市の監督の行き届かない面があり、市域外からのごみ搬入の可能性も指摘されている(〔証拠略〕)。なお、控訴人らは福田商店、山口商店が産業廃棄物を大阪市のごみ焼却工場に自己搬入していると主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。
以上のとおり、大阪市は、本件覚書により産業廃棄物であっても一般廃棄物と同様に覚書産廃としてごみ焼却工場に持込むことを認めており、このことは大阪市のごみ量の増加の一因になっていることが推認される。
(九) その他
控訴人らは、大阪市が市域外からのごみの調査、取締りを強化しているのは、大阪市が市域外からごみが流入している事実を認識しているためであると主張している。
しかし、大阪市が取締り等をなしたのは、市域外からのごみ流入を防ぐためであり、このことと大量のごみ流入があることとは直ちに結びつくものではない。
また、控訴人らは大阪市のごみは平成八年に入ってから前年比で約一〇パーセント減少しており、これは大阪市が市域外からのごみの調査、取締りを強化したためであり、このことから、少なくとも年間一二万トン以上の市域外ごみの流入があったといえると主張する。しかし、ごみ量が減少したとしても、ごみの減少の原因については種々の要因がからみあっているものであり、減少が右のような原因のみによるものであることを認めるに足りる証拠はない。
10 テレビ報道
〔証拠略〕によれば、MBSナウ(毎日テレビ)の番組で大阪市のごみ問題を取り上げ、控訴人らもインタビューを受け控訴人らの主張に沿った内容の放送がなされ、その放送の中で大阪市に市域外から搬入される具体的な一般廃棄物あるいは産業廃棄物について放送されていることが認められる。」
12 同六〇枚目表三行目ないし同七行目までを次のとおり訂正する。
「11 結論
以上のとおり、大阪市の市域外から一般廃棄物あるいは産業廃棄物が大阪市のごみ焼却工場に搬入されている具体的事例が認められる。また、本件覚書により大阪市のごみ焼却工場に一般廃棄物と共に産業廃棄物が搬入されていることは前記認定のとおりであり、これに市域外からの産業廃棄物も含まれている可能性も否定できない。
控訴人らは、許可業者が収集し大阪市の廃棄物処理場に搬入するごみの約半数の年間五〇万トンないし六〇万トンは大阪市外から搬入されたもの又は産業廃棄物であると主張する。しかし、前記のとおり大阪市外から搬入されたもの又は産業廃棄物に関して「大量に」搬入されていると指摘する証拠も大量というだけでその「大量」の具体的数字を明確にしていないし、また大阪市外から搬入されたもの又は産業廃棄物の具体的数量をあげている証拠もその数量につき必ずしも十分な根拠を示すことができず、したがって控訴人らの主張するような住之江工場及び鶴見工場の操業を廃止するに匹敵する数量を裏付ける的確な証拠はないといわざるを得ない。」
五 そこで違法性について検討する。
1 前記一記載のとおり、廃棄物処理法六条が一般廃棄物に関して市町村に廃棄物処理計画の作成を義務づけ、また同法六条の二が、「市町村は、一般廃棄物処理計画に従つて、その区域内における一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し、及び処分しなければならない。」と規定しており、これは地方自治体の固有の事務である(地方自治法二条)。そして、許可業者に対する許可は市町村単位でなされ、大阪市においても、許可業者は一般廃棄物業許可申請書に営業区域、契約戸数を記載する必要があり(〔証拠略〕)、新規則一六条の許可の条件ではその五項に「市域外において収集した一般廃棄物を本市の処理施設に搬入しないこと」と記載されている。以上を考え併せると、廃棄物処理法は市町村単位で一般廃棄物を処理することを前提としており、市町村は同法六条四項の場合のような広域処理の例外を除き、他の市町村の一般廃棄物の処理はその事務ではなく、これをなす必要はないものである。
ところで、前記のとおり、その数量が明確にはなっていないものの、市域外からのごみが大阪市の廃棄物処理施設に流入していることが認められ、被控訴人の方から大阪市が広域処理をしているとの主張はない。しかし、右流入ごみの数量は明確ではなく、前記認定のとおり大阪市においてもチェック体制をとるなど流入を防止するための方策を講じており、それにもかかわらず流入した分については、その大半は区分することができないのであるから市内ごみと一括処分したとしてもやむを得ないものであり、これを違法ということはできない。しかも、前記認定のとおり大阪市は合理的裁量に基づき一般廃棄物の処理計画を定めることができ、その処理計画に基づいて一〇工場体制でごみ焼却に当たっており、この処理計画が合理的裁量を逸脱しているとするものはなく、右体制の中で住之江工場、鶴見工場の占める必要性は他と同様に大きいというべきである。したがって、その数量が明確ではない市域外のごみの流入があるからといって、流入防止対策の強化を求めるのはともかく、市民生活に重大な支障を及ぼす両工場の操業の停止を求めることは到底認めることはできない筋合いであり、右ごみの流入をもって両工場の操業費用の支出を違法であるということはできない。
2 控訴人らは、大阪市域外から持込まれた一般廃棄物は少なくとも年三〇万トン以上あり、大阪市はこれについて処理費用を一トン当たり九三〇七円、年間約二七億円も支出している、しかし、大阪市は許可業者からは平成七年三月三一日までは一〇キログラム当たり五円八〇銭しか手数料を徴収しておらず、処理実費との差額は本来必要のない支出であり、その差額分の税金が違法に支出されていると主張する。
しかし、控訴人らの市域外流入ごみが三〇万トン以上あるという主張はその数量を認めるに足りる証拠はないし、右流入ごみの処理費用の方が手数料を上回るとしても、両工場を操業するための費用の支出の当否に影響を与えるものとはいえず、これが違法になるということはできない。
3 控訴人らはそもそも大阪市が産業廃棄物を処理すること自体違法であると主張する。
大阪市が、本件覚書により産業廃棄物を受け入れていることは前記認定のとおりである。しかし、廃棄物処理法一〇条二項は、一般廃棄物と併せて処理することができる産業廃棄物その他市町村が処理することが必要であると認める産業廃棄物を処理することについては市町村の裁量に委ねることとしており、大阪市では、同項の規定を受けて、新条例二三条一項及び五項(廃棄物処理条例一一条五項)の規定により、一般廃棄物と混合して処理することが可能であり、一般廃棄物と区別しがたい産業廃棄物を処理するものとしているところであり、本件覚書による産業廃棄物の処理は、法的な根拠を有しているものである。
なるほど、大阪市が廃棄物処理施設で受け入れている廃棄物総量が、全国的にみて大きめの数値を示している原因のかなりの部分は、右産業廃棄物等が影響していると推測できないでもない。そして大阪市は右の産業廃棄物につき一般廃棄物と同額の手数料で処理していることになる。しかし、前記のとおり市町村が産業廃棄物を取り扱うことは法的に認められており、かかる規定が補完的であるとはいえ、どの程度の産業廃棄物をどのように処理するかは手数料額を含めて各市町村の裁量に委ねられ、その実情に合わせて行うことが予定されているものであり、手数料額を含めて(前記減免措置が明確に違法であることを認めるに足りる証拠はない。)大阪市が産業廃棄物を受け入れていることが違法であるということはできない(また、市域外から流入している産業廃棄物についても前記1同様に両工場の操業費用の支出が違法とはいえない)。
4 また、控訴人らは、告示産業廃棄物が、事業系一般廃棄物と区別されずに、事業系一般廃棄物としての処理手数料を徴収し、告示産業廃棄物としての手数料が徴収されていないと主張するが、大阪市の場合告示産業廃棄物のうち排出量の多い事業所が排出する「特定廃棄物」は焼却工場ではなく、北港埋立処分地で受け入れていることが認められるのであって(弁論の全趣旨)、告示産業廃棄物が事務系一般廃棄物として廃棄物処理施設に搬入されていることを認めるに足りる証拠はない。
5 控訴人らは、市町村が建設し、操業する必要がある焼却工場は、一般廃棄物の処理用でなければならず、例外的に認められている産業廃棄物の量が大量であるためにごみ焼却場が必要となることは許されないと主張する。
しかし、前記のとおり市町村が産業廃棄物を取り扱うことは法的に認められており、かかる規定が補完的であるからといって、これを制限するときにはかえって産業廃棄物の野焼き等の弊害をもたらすものであり、産業廃棄物につきどの程度の量をどのように処理するかは各市町村の実情に合わせて行われるものであって、一般廃棄物のみをごみ焼却工場で扱うべきであるとの控訴人らの主張は採用できない。
6 控訴人らは違法な公金の支出と適法な公金の支出を区別できないときは、全体の支出を差し止めるべきであると主張する。
しかし、大阪市において一〇工場体制でごみ焼却の中間処分を行っており、この廃棄物の中に市域外からの廃棄物が混入しているからといって、これは全体の内の一部であって、しかも区別することができないのであるから、市域外から流入した廃棄物が混入しているからといってこれらの工場のうちの二つのごみ焼却工場に関する操業費用の支出が直ちに違法になるということはできないことは前示のとおりであり、また、本件の場合、違法な支出部分を区別することができないからといって、適法な支出部分を含めて全体の支出を差し止めることができないことはいうまでもない。
六 結論
よって、各ごみ焼却工場の操業費用の支出が違法であるとは認められず、支出差止めを求める控訴人らの請求は理由がない。
(結論)
よって、控訴人らの本件請求のうち、住之江工場及び鶴見工場の各建設費用支出の差止を求める訴えは訴えの利益がないから却下し、両工場の操業費用の支出に関する部分の請求は理由がないから棄却すべきであり、これと同じ結論の原判決は正当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担について、行訴法七条、民訴法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 中田耕三 裁判官 小田八重子 德永幸藏)